沈黙していた。家も街路も眠っていた。クリストフは振り向いた。老人の泣いてるのが眼に止まった。彼は立ち上がって、そのそばに行って抱擁してやった。二人は夜の静けさの中で、声低く話した。掛時計の秒を刻む鈍い音が、隣りの室で響いていた。シュルツは両手を握り合わせ、身体を前にかがめて、小声で話した。クリストフに尋ねられて、身の上や悲しい事柄を物語った。そしてたえず、愚痴を並べることを恐れては、こう言わざるを得なかった。
「私が悪かった……私は不平を言う権利はない……私は皆からたいへん親切にしてもらった……。」
そして彼は実際不平を言ってるのではなかった。それはただ、孤独な生活のつつましい物語から出てくる、無意識な憂愁にすぎなかった。最も悲しい刹那《せつな》には、ごく漠然《ばくぜん》とした感傷的な理想主義の信念告白を交えた。クリストフはそれに悩まされたが、しかし抗弁するのも残酷だった。要するにシュルツのうちにあるものは、確固たる信念よりもむしろ、信ぜんとする熱烈な欲求――不確かな希望であった。彼はそれに、浮標へすがるようにすがりついていた。彼はクリストフの眼の中にその確認を求めていた。クリストフ
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