しかしクンツは、もう間に合わないと注意し、電報は明日でなければ彼の手に渡るはずがないと言った。シュルツはうなずいた。そして二人はたがいにくり返した。
「弱ったな!」
二人はクンツの門口で別れた。シュルツにたいするクンツの友情はごく深くはあったけれども、村の外までシュルツを送ってゆき、たといわずかな道程《みちのり》でも、夜中にただ一人でまたもどって来るの軽挙を冒すほどには、進んでいなかったのである。翌日、クンツはシュルツの家で昼餐《ちゅうさん》をともにする約束だった。シュルツは心配そうに空をながめた。
「明日天気でさえあれば!」
そして彼は、クンツの言葉にいくらか胸の重みが取れた。巧みな日和見《ひよりみ》だと言われてるクンツは、厳《おごそ》かに空を見調べて――(彼もまたシュルツと同じく、自分らの小さな土地の晴れ晴れとした景色《けしき》をクリストフに見せたかったのである)――そして言った。
「明日はいい天気だ。」
シュルツはまた町へもどっていった。町へ達するまでには、轍《わだち》の中や、路傍に積んである石などに、一度ならずつまずいた。家へ帰る前に菓子屋へ寄って、町の名物たるある
前へ
次へ
全527ページ中385ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング