ばかりしていた。リーリ・ラインハルトの生来の無頓着《むとんじゃく》さがのさばって、ふと笑い出したり無法なことを言い出したりすると、にわかに良人《おっと》の眼つきかクリストフの眼つきかが彼女を狼狽《ろうばい》さした。手紙のことが彼女の頭にひらめいた。彼女はまごついた。クリストフもラインハルトもまごついた。そして各自に考えた。
「二人は知らないのかしら。」
 けれども彼らは何にも言わないで、前と同じようにしてゆこうとつとめた。
 しかし無名の手紙はなおつづいて来て、ますます侮辱的に卑猥《ひわい》になっていった。そのために彼らはいらだちと堪えがたい恥ずかしさとに陥った。手紙を受け取ってもたがいに隠していたが、また読まないで焼き捨てる力もなかった。彼らは震える手で封を切った。中の紙を開きながら絶望した。同じ問題にいくらか新しい変化を添えてる読むに恐ろしい事柄――害毒しようとつとむる精神が作り出した巧みな汚らわしい事柄――を読み取るとひそかに泣いた。執拗《しつよう》につきまとってくるこの悪者はいったい何奴だろうかと、彼らは捜しあぐんだ。
 ある日、ラインハルト夫人は力もつきはてて、迫害を受けてる
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