なぎらしてる異教的悦楽の情に、身震いをしたことであろう。
ついに出版はなされた。もとより常識を逸した出版だった。クリストフが歌曲[#「歌曲」に傍点]の自費出版をさせその書物を預けた本屋は、ただ隣人だというので彼から選まれたのだった。そういう大事な仕事には手はずが整っていなかった。印刷は数か月もかかった。誤植が多く、校正にも費用がかかった。クリストフはまったく不案内だったから、すべてに三分の一ほども余計に金を取られた。入費ははるかに予想を超過した。次にそれが済むと、クリストフはおびただしい部数を腕にかかえて、どうしていいかわからなかった。その本屋には得意がなかった。書物を広めるための策を少しも講じなかった。その無頓着《むとんじゃく》はまたクリストフの態度とよく合っていた。気が済むように広告でも二、三行書いてくれと彼が頼むと、クリストフは答えた。「広告はいやだ。音楽さえよければ、それで広告になるはずだ。」本屋はクリストフの意志を恭々《うやうや》しく尊重した。そして店の奥に書物をしまい込んだ。それはりっぱに保存されていた。というのは、半年のうちに一冊も売れなかったから。
クリストフは、
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