かった。しかしそれは、彼の気を落ち着けさせ彼を手もとに引き留める一つの方法だったので、彼女は彼が満足しさえすればそれで非常に幸福だった。
 クリストフは、よく知られた種類の安心できる曲を、世に発表することをしないで、非常に愛着してるごく個性的な一連の作品を、原稿の中から選んだ。それはピアノの曲であって、ごく短い大衆的なものやごく込み入ったほとんど劇的なものなど、種々の歌曲が入り交っていた。全体が時には楽しい時には悲しい一連の印象を形造っていて、それらの印象はごく自然に相連続し、順次にピアノ独奏と単独もしくは伴奏付の独唱とで演奏さるべきものとなっていた。「なぜなら、」とクリストフは言っていた、「私は夢想する時、常に自分の感じてることだけを表白しはしない。私は言葉にそれと言わないで、苦しんだり喜んだりする。しかし、それを言わないではおられない瞬間も、別になんの考えもなく歌わないではおられない瞬間も、やってくる。時としては、ぼんやりした言葉、取り留めもない文句、にすぎないこともある。時としては、まとまった詩のこともある。それからまた、私は夢想を始める。そういうふうにして一日は過ぎ去る。そして
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