川の向こう側には、瑪瑙《めのう》色に縁取った美しい眼の牝牛《めうし》が、うっとりと夢みていた。一人の金髪の少女が壁の縁に腰掛け、翼をそなえた小さな天使のように目荒な軽い背負い籠《かご》を肩にして、裸の足をぶらつかせ意味のない唄《うた》を歌いながら、やはりうっとりと夢みていた。遠く牧場の中には、一匹の白犬が大きな円を描いて飛び回っていた……。
 クリストフは樹《き》によりかかって、春めいた大地をながめかつ聞いていた。それらのものの平和と喜悦とにとらえられた。忘れていたのだ、忘れていたのだ……。にわかに彼は、頬《ほお》をつけていた美しい樹を両腕に抱きしめた。地面に身を投げ出した。草の中に頭を埋めた。彼は激しく笑っていた、幸福に笑っていた。生命のあらゆる美が恵みが魅力が、彼を包み込み浸し込んだ。彼は考えた。「どうして、お前はこんなに美しいのか、そして彼ら――人間――はあんなに醜いのか?」
 それはどうでもいいのだ! 彼は生命を愛していた、愛していたのだ。常に生命を愛するだろうということを、何物からも生命を奪われ得ないだろうということを、彼は感じた。彼は夢中になって大地を抱擁した。彼は生命を抱
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