ぎた。家じゅう静まり返っていた。クリストフは熱に震えていた。時々涙を流した。夜中に身を起こして、壁に拳固《げんこ》をさしつけた。午前の二時ごろ、にわかに狂暴な気持に駆られて、汗にまみれ半ば裸のまま寝床から出た。大公爵を殺しに行きたかった。憎悪《ぞうお》と恥辱とにさいなまれていた。身心とも燃えたってもがいていた。――この暴風雨《あらし》も、外へは少しも聞こえなかった。一つの言葉も一つの音もし漏れなかった。彼は歯を食いしばって、すべてを自分のうちに閉じこめていた。

 翌朝、彼はいつものとおりに降りて来た。ひどくやつれていた。彼は何にも言わなかった。母も尋ねかねた。彼女は近所の噂《うわさ》ですでに知っていた。終日彼は暖炉の隅の椅子《いす》にすわり、老人のように背をかがめ、いらだち黙然としていた。そして一人になると、黙って涙を流した。
 夕方、社会主義新聞の編集者が会いに来た。もとより彼は事件を知っていて詳細を聞きたがっていた。クリストフは彼の訪問に感動して、自分を危地に陥れた人々からの同情と謝罪とをもたらしたものだと率直に解した。自尊心から何にも後悔していないふうをした。そして心にあること
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