は官邸へ伺候せられたいとのことだった。――朝はもう過ぎ去っていた。一時に近かった。クリストフはほとんど気にもしなかった。
「もう遅《おそ》い。」と彼は言った。「明日にしよう。」
しかし母は気をもんだ。
「いえ、いえ、殿下にお目にかかるのを延ばせるものではないよ。すぐに行かなければいけません。大事な御用らしいから。」
クリストフは肩をそびやかした。
「大事な御用ですって、あんな人たちに大事な話なんかあるもんですか。……僕に音楽上の意見でも聞かせたいんだろう。愉快だな!……ジーグフリート・マイエル(注―― Siegfried Meyer はドイツの諷刺家らが 〔Seine Majesta:t〕 陛下――皇帝――のことを仲間うちで言う時に用いた綽名《あだな》)と競争しようとの気まぐれを起こして、自分でもエジルの賛歌[#「エジルの賛歌」に傍点]みたいなものを作って人に示したいんだろう。僕は容赦はしない。こう言ってやろう。政治をなさるがいい、政治では殿下が御主人だ。いつも御道理《ごもっとも》だ。しかし芸術では、用心なさるがいい。芸術にふみ込んだら、羽飾りも兜《かぶと》も軍服も金銭も肩書も祖先
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