のとを同じ籠《かご》の中に投じながら、すなわち諸君がいつもなしてるように、連隊の娘[#「連隊の娘」に傍点]を材料にした幻想曲《ファンタジア》とサキソフォーンの四重奏曲《カルテット》との間にパルシファル[#「パルシファル」に傍点]の前奏曲をはさみ、あるいは黒人舞踏《クークウォーク》の一節《ひとふし》とレオンカヴァロの愚作とをベートーヴェンのアダジオの両側に並べたりして、世にある美しいものを汚すのは、許しがたいことだ。諸君は音楽的の大国民だと誇っている。諸君は音楽を愛すると自称している。だがいったい、どういう音楽を愛するのか! よい音楽をなのか、または悪い音楽をなのか? 諸君は皆一様にそれらを喝采《かっさい》するではないか。とにかく選択してみたまえ! ほんとうに諸君が欲するのはなんだ? それを諸君はみずから知っていない。知ろうとも思ってはいない。一方を選ぶことを、誤りをしやすまいかを、あまりに恐れているのだ。……そんな用心なんか、悪魔にでもいっちまえだ!――俺《おれ》は各派を超越してる、と諸君は言うだろう。――超越、それは以下という意味だ……。」
 そしてクリストフはチューリッヒの剛健な市
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