をじかに聞かせらるる。
ロマン・ローランは、フランスの中部に位するクラムシーという小さな都会で、古くより純粋のフランスの血を伝えている家庭に、一八六六年に生まれた。そしてパリーおよびローマで教育を受けた。彼の風貌《ふうぼう》のうちには、沈重《ちんちょう》な北方人の趣きと瞑想《めいそう》的な苦行者の趣きとがあるといわれているが、その心には、輝かしい溌剌《はつらつ》たる[#「溌剌《はつらつ》たる」は底本では「溌刺《はつらつ》たる」]魂が蔵せられていた。明敏な知力と精鋭な感受性と豊富な生活力とが、彼のうちに熾《も》えたっていた。万人の魂をして、同じ力に、同じ生命の火に、燃えたたしむること、それが彼の理想であった。民衆をして、プロメシュースの火の薪《たきぎ》たらしむることであった。そして彼が試みた最初の努力は、新らしい民衆劇を起こさんとすることであった。しかし彼の最も力強い著述は、偉人|叢書《そうしょ》三巻と「ジャン・クリストフ」十巻とである。後者は一九〇四年から一二年までの間に世にあらわれた。前者のうち、「ベートーヴェン伝」は一九〇三年に、「ミケルアンゼロ伝」は一九〇六年に、「トルストイ伝
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