にはたえ得るくらい濃密だったが、明らかにふたりを支えることはできなかった。マリユスとジャン・ヴァルジャンとは、もし別々に分かれたらあるいは無事ですむかも知れなかった。しかしジャン・ヴァルジャンは、おそらくはもう死骸《しがい》になってるかも知れない瀕死《ひんし》のマリユスをにないながら、続けて前進した。
水は腋《わき》まできた。彼は今にも沈み込むような気がした。その深い泥土の中で歩を運ぶのも辛うじてであった。ささえとなる泥の密度はかえって障害となった。彼はなおマリユスを持ち上げ、非常な力を費やして前進した。しかしますます沈んでいった。もう水から出てるのは、マリユスをささえてる両腕と頭とだけだった。洪水《こうずい》の古い絵には、そういうふうに子供を差し上げてる母親が見らるる。
彼はなお沈んでいった。水を避けて呼吸を続けるために、頭をうしろに倒して顔を上向けた。もしその暗黒の中で彼を見た者があったら、影の上に漂ってる仮面かと思ったかも知れない。彼は自分の上に、マリユスのうなだれた頭と蒼白《そうはく》な顔とを、ぼんやり見分けた。彼は死に物狂いの努力をして、足を前方に進めた。足は何か固いものに触れた。一つの足場である。ちょうどいい時だった。
彼は身を伸ばし、身をひねり、夢中になってその足場に乗った。あたかも生命のうちに上ってゆく階段の第一段のように思えた。
危急の際に底の泥《どろ》の中で出会ったその足場は、底部の向こうの一端だった。それは曲がったままこわれないでいて、板のようにまた一枚でできてるかのように、水の下に撓《しな》っていた。よく築かれた石畳工事は、迫持《せりもち》になっていてかくまでに丈夫なものである。その一片の底部は、半ば沈没しながらなお強固で、まったく一つの坂道となっていた。一度その坂に足を置けば、もう安全だった。ジャン・ヴァルジャンはその斜面を上って、泥濘孔《でいねいこう》の彼岸に着いた。
彼は水から出て、一つの石に出会い、そこにひざまずいた。彼は自然にそういう心地になって、しばらくそこにひざまずいたまま、全心を投げ出して言い知れぬ祈念を神にささげた。
彼は身を震わし、氷のように冷たくなり、臭気にまみれ、瀕死《ひんし》の者をになって背をかがめ、泥濘をしたたらし、魂は異様な光明に満たされながら、立ち上がった。
七 上陸の間ぎわに座礁するこ
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