。彼らは蛮夷《ばんい》であるかのようだったが、実は救済人であった。彼らは暗夜の仮面をつけて光明を要求していた。
もちろん荒々しく、かつ恐ろしきそれらの男、しかも善のために荒々しくまた恐ろしきそれらの男、それに対立して他の男らがいる。彼らはほほえんでおり、刺繍《ししゅう》の衣をまとい、金銀を光らし、リボンで飾り立て、宝石を鏤《ちりば》め、絹の靴足袋《くつたび》をはき、白い鳥の羽をつけ、黄色い手袋をはめ、漆塗りの靴をうがち、大理石の暖炉のすみでビロードのテーブルに肱《ひじ》をつき、過去の、中世の、いわゆる神聖なる権利の、盲信の、無知の、奴隷制《どれいせい》の、死刑の、戦争の、維持と保存とを静かに主張し、サーベルと火刑場と絞首台とを、低声にまた丁寧に誉めたたえている。しかし吾人をして言わすれば、それらの文明の野蛮人と野蛮の文明人とのいずれかを強いて選ばせらるるならば、吾人は野蛮人の方を取るであろう。
しかしながら、天はほむべきかな、も一つの選択が可能である。前に進むにも後に退くにも、何ら急転直下の要はない。専制政の要もなく、恐怖政の要もない。吾人は穏やかなる斜面における進歩を欲するのであ
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