か。――マニュエル区隊です。――首領はだれだったか。――私です。――まだ若いところを見るとお前は、政府を攻撃しようなどという大胆な決心をただひとりでやったのではあるまい。どこから命令を受けたか。――中央委員会からです。
 軍隊もまた人民と同時に掘り返された。その後、ベルフォールやリュネヴィルやエピナルなどの動乱がそれを証拠立てた。当てにされていたのは、第五十二、第五、第八、第三十七の連隊と、第二十軽騎兵連隊とだった。ブールゴーニュや南部諸州の各都市では、自由の木[#「自由の木」に傍点]が立てられた、すなわち、赤色の帽子をかぶせた長い棒が。
 情況は右のとおりであった。
 かかる情況を、すべて民衆の他の集合地よりもすぐれてサン・タントアーヌ郭外が、本章の初めに述べたとおり、いっそう顕著ならしめ、いっそう強調さしていた。そこが急所だったのである。
 蟻《あり》の巣のように人がたかっており、蜜蜂《みつばち》の巣のように勤勉で勇敢でたけり立っているその古い郭外は、動乱の期待と希望とのうちに震えていた。労働は以前のとおり続けられながらもすべてが動揺していた。そのはつらつとしたしかも陰鬱《いんうつ
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