唄《こうた》と、弾薬のいっぱいつまってるブリキ罐《かん》とがあった。
ひとりの労働者が仲間のひとりと酒を飲んでいたが、こんなにほてると言って身体にさわらした。すると仲間は、彼の上衣の下にピストルがあるのを手先に感じた。
ペール・ラシューズ墓地とトローヌ市門との間の大通りの溝《みぞ》の中に、ごく寂しい所で遊んでいた子供らが、木片や塵芥《じんかい》のうずたかい下に一つの袋を見いだした。中には種々なものがはいっていた、弾丸の鋳型、弾薬莢《だんやくきょう》を作るに用いる木製の軸、狩猟用の火薬の粒がはいってる鉢《はち》、内部には明らかに鉛をとかした跡が残ってる小さな坩堝《るつぼ》。
ある日朝の五時に、警官らは不意にパルドンという男の家へ踏み込んだことがある。この男は後に、一八三四年四月の暴動の折り、バリカード・メリー区隊のうちにはいって戦死した者である。その朝警官らがふみ込むと、ちょうど彼は寝床のそばにつっ立って、製造中の弾薬莢を手に持ってるところだった。
労働者らが休息する時分に、ピクピュス市門とシャラントン市門との間の、入り口にシアム遊びができてるある居酒屋の近くの、両側に壁のある狭
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