そういう男がひとり「ちょうど見当たった」。その名をルイ・フィリップ・ドルレアンと言った。
二百二十一人の者がルイ・フィリップを王とした。ラファイエットがその即位式をつかさどった。彼はそれを最上の共和政[#「最上の共和政」に傍点]と呼んだ。パリーの市庁はランスの大会堂([#ここから割り注]訳者注 以前歴代の国王が即位式を上げし場所[#ここで割り注終わり])の代わりとなった。
この半王位を全王位に置換したことが、すなわち「一八三〇年の事業」であった。
巧者らがその業を終えた時、彼らの解決の大なる欠陥が現われてきた。すべてそれらは絶対の正義を外にしてなされたものであった。絶対の正義は叫んだ、「予は抗議す!」と。そして恐るべきことは、彼は影のうちに再びはいっていったのである。
三 ルイ・フィリップ
およそ革命なるものは、恐ろしき腕と堪能なる手とを有している。その打撃は的確であり、その選択は巧妙である。そして一八三〇年の革命のごとく、たとい不完全であり、変性で雑種であり、幼稚なる状態になされたるものであろうとも、なお常にかなりの天意的清明さをそなえているものであって、悲し
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