rlot ―→ atigeur ―→ becquillard.
殴《なぐ》り合う…… se donner du tabac(煙草をかぎ合う――十七世紀)―→ se chiquer la gueule(頤《あご》を咬《か》み合う――十九世紀)。
[#ここで字下げ終わり]
そしてこの最後のものなどは、数多くの異なった言い方が、両者の間に存在していた。カルトゥーシュの言葉とラスネールの言葉とは全く異なっていた。そして隠語のすべての言葉は、それを話す人々と同じく絶えず逃げ回っている。
 けれども時々、かえってこの変化のために、古い隠語が再び現われてきて新しいものとなることがある。そしてその維持されてゆく中心地はいくつもある。タンプルの一郭は十七世紀の隠語を保存していた。ビセートルが監獄であった頃は、テューヌ団の隠語を保存していた。そこでは昔のテューヌ仲間の anche という語尾が残っていた。
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Boyanches−tu?(飲むか)
Il croyanche.(彼は思う)
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しかしそれでも、原則としては常住に変化するものである。
 もし哲学者にして、絶えず消散してゆくこの言語を、よく観察するために一時一定の形に引き止めるならば、彼は痛ましいかつ有益な瞑想《めいそう》に沈み込むであろう。いかなる研究も、隠語の研究ほど教育上に有効で材料豊富なものはない。そのいずれの比喩《ひゆ》もいずれの語源も皆、それぞれ一つの教訓を含んでいる。――隠語を話す者らの間では、battre([#ここから割り注]打つ[#ここで割り注終わり])は feindre([#ここから割り注]装う[#ここで割り注終わり])という意味になる。On bat une maladie.([#ここから割り注]人は病気を打つ――に勝つ――を装う。[#ここで割り注終わり])狡猾《こうかつ》は彼らの力である。
 彼らにとっては、人間という観念は影という観念と離れない。夜を sorgue といい、人を orgue という。すなわち人は夜の転化語である。
 彼らは常に社会をもって、自分らを殺す大気のように考え、致命的な力のように考えている。そして人が自分の健康のことを語るように、自分らの自由のことを語っている。捕縛された者は一つの malade([#ここから割り注]病人[#ここで割り注終
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