いいえ。」
 役女は嘘《うそ》を言った。相次いで、躊躇《ちゅうちょ》することなく、即座に、献身的に、続けて二度嘘を言った。
「失礼しました。」とジャヴェルは言った。そして彼は深くおじぎをして退いて行った。
 おお聖《きよ》き貞女よ! 汝は既に久しき以前よりこの世の者ではなかった。汝は光明のうちに汝の姉妹の童貞たちや汝の兄弟の天使たちと伍《ご》していたのである。その虚言も汝のために天国において数えられんことを!
 サンプリス修道女の確答は、ジャヴェルにとってはある決定的なものであって、吹き消されたばかりでテーブルの上にまだ煙ってる手燭の訝《いぶか》しさにも気を留めなかったのである。
 一時間ほど過ぎて、一人の男が、木立ちと靄《もや》との間を、パリーの方へ向かってモントルイュ・スュール・メールから急いで遠ざかって行った。それはジャン・ヴァルジャンだった。彼に出会った二、三の荷車屋の証言によって、彼は一つの包みを持ち、身には作業用の上衣をまとっていたことが立証された。どこで彼はその上衣を手に入れたか? だれにも知られなかった。ところで、数日前に工場の病舎で一人の老職工が死んだが、残ってるもの
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