レーヌ氏の室の鍵《かぎ》を取り出し、毎晩マドレーヌ氏が自分の室に上がってゆく時に使っていた手燭《てしょく》を取り上げて、それから、マドレーヌ氏がいつも取ってゆく釘《くぎ》に鍵をかけ、そのそばに手燭を置き、あたかも彼を待ってるかのようだった。それからまた彼女は椅子《いす》に腰をおろして考え初めた。その正直なあわれな婆さんは、自分でも知らずにそれらのことをしたのだった。
 それからおよそ二時間あまりも過ぎてからだったが、彼女は夢想からさめて叫んだ。「まあ、どうしたというんだろう、私はあの方の鍵を釘にかけたりなんかして!」
 その時、部屋《へや》のガラス窓が開き、そこから一つの手が出てきて、鍵と手燭とを取り、火のついた別の蝋燭《ろうそく》から手燭の小蝋燭に火をつけた。
 門番の婆さんは目をあげてあっと口を開いた。喉元《のどもと》まで叫び声が出たが、彼女はそれを押さえつけた。
 彼女は、その手、その腕、そのフロックの袖《そで》を覚えていた。
 それはマドレーヌ氏であった。
 彼女は数秒間口がきけなかった。彼女自ら後になってそのできごとを人に話す時いつも言ったように、まったくたまげ[#「たまげ」
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