りです。」とシュニルディユーは言った。
彼はコシュパイユに向かって言った。
「コシュパイユ、お前には左の腕の肱《ひじ》の内側《うちがわ》に、火薬で焼いた青い文字の日付がある。それは皇帝のカーヌ上陸の日で、一八一五年三月一日[#「一八一五年三月一日」に傍点]というのだ。袖《そで》をまくってみろ。」
コシュパイユは袖をまくった。すべての人々の目はその露《あら》わな腕の上に集まった。一人の憲兵はランプを差し出した。日付はそこにあった。
その不幸な人は傍聴人および判事らの方へ向き直った。顔には微笑を浮かべていた。その微笑を見た者は、今なお思い出しても心の痛むのを感ずるのである。それは勝利の微笑であり、同時にまた絶望の微笑であった。
「よくおわかりでしょう、」と彼は言った、「私はジャン・ヴァルジャンです。」
その室のうちには、もはや判事も検事も憲兵もいなかった。ただじっと見守ってる目と感動した心ばかりだった。だれもみな自分のなすべき職分を忘れていた。検事は求刑するためにそこにいることを忘れ、裁判長は裁判を統《す》べるためにそこにいることを忘れ、弁護士は弁護するためにそこにいることを忘れて
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