しば見たことがあります。私はこの男を十分|識《し》っていることをここにくり返して申したいのであります。』」
そのきわめて簡明なる申し立ては、公衆および陪審員に強い印象を与えたらしかった。検事はジャヴェルを除いた三人の証人、ブルヴェー、シュニルディユー、コシュパイユを再び呼び寄せて厳重に尋問すべきを主張して席に着いた。
裁判長は一人の守衛に命令を伝えた。直ちに証人の室の扉《とびら》は開かれた。守衛は万一の場合手助けとなる憲兵を一人伴って、囚徒ブルヴェーを導いてきた。傍聴人らは不安に息を凝らし、彼らのすべての胸はただ一つの心を持ってるかのように皆一時におどった。
前囚徒ブルヴェーは、中央監獄の暗灰色の上衣を着ていた。六十歳ばかりの男で、事務家らしい顔つきと悪者らしい様子とをそなえていた。事務家の人相と悪者の様子とは互いに相応することがあるものである。彼はある新しい悪事で再び監獄にはいったのであるが、いくらか取り立てられて牢番になっていた。「奴《やつ》何かの役にたちたいと思ってるらしい、」と上役どもから言われていた。教誨師《きょうかいし》らも彼の宗教上の平素については善《よ》く言ってい
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