! もう一つの席もないのですか。」
「一つもありません。扉はしまっています。もうだれもはいることはできません。」
守衛はそこでちょっと言葉を切ったが、またつけ加えた。「裁判長殿の後ろになお二、三の席がありますが、そこには官吏の人きり許されていません。」
そう言って、守衛は彼に背を向けた。
彼は頭をたれてそこから去り、控え室を通り、あたかも一段ごとに逡巡《しゅんじゅん》するかのようにゆっくり階段を下りていった。たぶん自ら自分に相談していたのであろう。前日来彼のうちに戦われていた激しい闘争はなお終わっていなかった。そして彼は各瞬間ごとにその新しい局面を経てきたのだった。階段の中の平段までおりた時、彼は欄干にもたれて腕を組んだ。それから突然フロックの胸を開き、手帳を取り出し、鉛筆を引き出し、一枚の紙を破り、その上に反照燈の光で手早く次の一行を認めた。「モントルイュ[#「モントルイュ」に傍点]・スュール[#「スュール」に傍点]・メール市長[#「メール市長」に傍点]、マドレーヌ[#「マドレーヌ」に傍点]。」それから彼は大またにまた階段を上って、大勢の人を押しわけ、まっすぐに守衛の所へ行き、
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