件に関係があってきたのではありません。ただちょっとある弁護士に話したいことがあるものですから。」
「いやそうでしたか。」と町人は言った。「それ、ここに入り口があります。番人はどこにいるかしら。その大階段を上がってゆかれたらいいでしょう。」
 彼は町人の教えに従った。そしてやがてある広間に出た。そこには大勢の人がいて、法服の弁護士を交じえた集団を所々に作って何かささやいていた。
 黒服をつけて法廷の入り口で小声にささやき合ってるその人々の群れは、いつも見る人の心を痛ましめるものである。慈悲と憐憫《れんびん》とがそれらの言葉から出るのはきわめてまれである。最も多く出るものは、あらかじめ定められた処刑である。考えにふけりつつそこをよぎる傍観者にとっては、それらの群集は陰惨な蜂《はち》の巣のように見えるのであろう。その巣の中においては、うち騒いでる多くの頭が協同してあらゆる暗黒な建物を築こうとしているのである。
 そのただ一つのランプの燈《とも》された大きな広間は、昔は司教邸の控えの間であったが、今は法廷の控室となっていた。観音開きの扉が、その時閉ざされていて、重罪裁判が開かれている大きな室を
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