あるではないか。

     四 睡眠中に現われたる苦悶《くもん》の象

 午前の三時が鳴った。彼はほとんど休みなく五時間室の中を歩き回っていたのである。そして初めて彼は椅子《いす》の上に身を落とした。
 彼はそこに居眠って、夢を見た。
 多くの夢がそうであるとおりに、この夢も、何ともいえぬ不吉な悲痛なものであったというほかには、その時の事情には何ら関係もないものだった。しかしそれは彼に深い印象を与えた。彼はその悪夢にひどく心を打たれて、後にそれを書き止めた。次のものは、彼が自ら書いて残しておいた記録の一つである。われわれはただそれを原文どおりにここに再録すべきであろう。
 その夢がたといいかようなものであろうとも、それを省けば、その夜の物語は不完全たるを免れないだろう。それは実に病める魂の暗澹《あんたん》たる彷徨《ほうこう》である。
 記録は次のとおりである。表題には、その夜予の見たる夢[#「その夜予の見たる夢」に傍点]、という一行が書かれている。

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 私は平野のうちにいた。一本の草もない広い寂しい平野であった。昼であるか夜であるか、私にはわからなかった。
 
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