いすみから起こってきたのであったが、しだいに激しく恐ろしくなり、今では彼の耳にはっきり響いてきた。そして彼のうちから外に出て外部から話しかけてるように思えてきた。彼はその最後の言葉をきわめてはっきり聞いたような気がして、一種の恐怖を感じて室の中を見まわした。
「だれかいるのか。」と彼は自ら惑《うたが》って大声に尋ねた。
 それから彼は白痴に似た笑いを立てた。
「ばかな! だれもいるはずはない。」
 しかしそこにはだれかがいたのである。ただそれは人の目には見えない者であった。
 彼は二つの燭台を暖炉の上に置いた。
 そして彼は再び単調なうち沈んだ歩調で歩き出した。それが、下の室に眠っていた会計係りの男の夢を妨げ突然その眠りをさましたのだった。
 その歩行は彼をやわらげ、また同時に彼を熱狂さした。時とすると危急の場合において人は、あちこちで出会うすべてのものに助言を求めるため方々動き回るものらしい。さてしばらくすると、彼はもはや自分自身がわからなくなってしまった。
 彼は今や、次々に取った二つの決心の前にいずれも同じ恐怖をいだいてたじろいだ。彼に助言を与えた二つの観念は、いずれも同じく凶悪
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