のをなくしてしまわなければいけない。」
彼はポケットを探って、紙入れを取り出し、それを開いて、中から小さな一つの鍵《かぎ》を引き出した。
彼はその鍵をある錠前の中に差し入れた。その錠前は、壁にはられてる壁紙の模様の最も暗い色どりの中に隠されていて、ちょっと見てはその鍵穴も見えないくらいだった。がそこに、隠し場所が、壁の角と暖炉棚との間にこしらえられた一種の戸棚みたようなものがあいた。中にはただ少しのつまらぬ物がはいっていた、青い麻の仕事着と、古いズボンと、古い背嚢《はいのう》と、両端に鉄のはめてある大きな刺々《とげとげ》の棒とが。一八一五年十月にディーニュを通って行った頃のジャン・ヴァルジャンを見た人はその惨《みじ》めな服装の品々をよく見覚えているであろう。
彼は自分の出発点を常に忘れないために、銀の燭台をしまっておいたと同じようにそれらをしまっておいたのである。ただ彼は徒刑場からきたそれらのものを隠し、司教からきた燭台を出しておいたのだった。
彼はちらと扉《とびら》の方を見やった。閂《かんぬき》で閉ざしておいたのがなお開きはしないかと恐れるかのように。それからにわかに急に身を
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