い盗人を、明らかに賤《いや》しむべき一人の男を、多少重すぎはするがしかし実は正当である刑罰から救わんがために、一地方全部が破滅しなければならないというのか。一人のあわれな女が病舎で死に、一人のあわれな子供が路傍にたおれなければならないというのか、犬のように! ああそれこそのろうべきことである。母親はその子供を再び見ることもなく、子供は自分の母親をほとんど知りもしないで終わる。そしてそれもみな、林檎《りんご》を盗んだあの老耄《おいぼれ》のためというのか。たしかに彼奴《あいつ》だって、林檎のためでなくとも、何か他のことで徒刑場にはいってもいい奴だろう。一人の罪人を助けて罪ない多くの人を犠牲にするとは、徒刑場にいても自分の茅屋《ぼうおく》にいてもあまりその不幸さに変わりもなく、またせいぜい四、五年とは生きてもすまい老いぼれの浮浪人を助けて、母親や妻や児やすべての住民を犠牲にするとは、何という結構な配慮なのか。あの小さなあわれなコゼットは、世の中に助けとなるものは私だけしか持たない、そして今では、あのテナルディエの怪しい家で寒さのためにきっと青くなってるだろう。そこにもまた悪党がいる。そして私
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