盗みをしたのだ。私がいくら彼は盗みをしなかったと言ってもむだである、彼は実際盗んだのだから。私はここにとどまっていよう。続けて働こう。十年のうちには千万の金をこしらえ、それをこの地方にふりまこう。少しも自分の身にはつけまい。身につけて何になろう。私がなすことはみな自分のためではないのだ。人々の繁栄は増すだろう。工業は盛んになり活気立ってくる。大小の工場は増加してくる。家は百となり千となり、また幸福になる。人民はふえる。田畑であった所には村ができ、荒地であった所には田畑ができる。貧困は後をたち、それとともに放逸や醜業や窃盗や殺害や、あらゆる不徳、あらゆる罪悪は、みな消え失せる。あのあわれな女も自分の子供を育てる。そしてこの地方全部が富み栄え正直になるのだ! ああ実に、私は愚かで誤っていた。自首して出るとは、まあ何ということを言ったのだろう。実際よく注意しなければいけない、何事もあわててはいけない。なに、偉大な高潔なことをなすのを好んだからというのか。結局それは一つのお芝居《しばい》に過ぎないのだ。なぜなら私は自分のこと、自分だけのことしか考えなかったのだから。どこの奴《やつ》ともわからな
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