たことであり、聞くところは彼が聞くを欲しなかったことだった。二千年前の刑人([#ここから割り注]訳者注 キリスト[#ここで割り注終わり])に向かっては「進め!」と言ったごとく今彼に向かっては「考えよ!」というある神秘なる力に、彼は駆られたのであった。
これ以上筆を進める前に、そしてすべてを十分明らかにせんがために、ここに一つの必要な注意をつけ加えておこう。
人間は確かに自分自身に向かって話しかけることがある。思考する生物たる人間にしてそれを経験しなかった者は一人もあるまい。言語なるものは、人の内部において思想より本心へ本心より思想へと往復する時ほど、荘厳なる神秘さを取ることはない。本章においてしばしば用いらるる彼は言った[#「彼は言った」に傍点]または彼は叫んだ[#「彼は叫んだ」に傍点]という言葉は、ただかかる意味においてのみ理解されなければならない。人は外部の沈黙を破らずして、自己のうちにおいて言い、語り、叫ぶものである。そこに非常な喧噪《けんそう》がある。口を除いてすべてのものがわれわれのうちにおいて語る。魂のうちの現実は、それが目に見るを得ず手に触るるを得ざるのゆえをもって、
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