気づいた者もあった。しかし医者が彼の耳に身をかがめて「だいぶ容態が悪いようです。」と言ったことが知れると、その理由はすぐに解かれた。
 それから彼は市役所に帰った。書斎に掛かっているフランスの道路明細地図を彼が注意深く調べているのを給仕は見た。彼は紙に鉛筆で何か数字を書きつけた。

     二 スコーフレール親方の烱眼《けいがん》

 町はずれに、スコーフラエルをフランス流にしてスコーフレール親方と呼ばれてる一人のフランドル人が、貸し馬や「任意貸し馬車」をやっていた。マドレーヌ氏は市役所からその家にやって行った。
 そのスコーフレールの家に行くのに一番近い道は、マドレーヌ氏の住んでいた教区の司祭邸がある人通りの少ない街路であった。司祭は人のいうところによると物のよくわかったりっぱな尊敬すべき人だった。マドレーヌ氏がその司祭邸の前に通りかかった時、街路にはただ一人の通行人がいるだけだったが、その人は次のようなことを目撃した。市長は司祭の住居を通り越して足を止め、じっとたたずんだが、それからまた足を返して司祭邸の戸の所まで戻ってきた。その戸は中門であって鉄の戸たたきがついていた。彼はすぐ
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