です。私はあなたを警視庁へ告発しました。」
 少し前から記録を手に握っていたマドレーヌ氏は、まったく無関心な調子で尋ねた。
「そして何という返事がきました。」
「私は気違いであると。」
「そして?」
「そして実際、向こうの方が正当でありました。」
「君がそれを認めたのは幸いです。」
「認めざるを得なかったのです。真のジャン・ヴァルジャンが発見されたのですから。」
 マドレーヌ氏は持っていた帳簿を手から落とした。彼は頭をあげてじっとジャヴェルを見つめた。そして名状し難い調子で言った。「ほう!」
 ジャヴェルは続けた。
「こういう次第です、市長殿。アイイー・ル・オー・クロシェの近くの田舎に、シャンマティユーじいさんと呼ばるる一人の老人がいたそうであります。惨《みじ》めな奴でだれも注意を向ける者はなかったそうです。いったいこういう奴らは何で生活しているのかだれにもわかりません。ところで昨年の秋に、そのシャンマティユーじいは、酒造用の林檎《りんご》を盗んだために捕えられました。だれの家でしたか……まあそれはどうでもいいことです。とにかく窃盗を行ない、塀《へい》を越え、枝を折ったのです。でシャン
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