ような時、彼女はわざと笑ったり歌ったりしてみせた。
 そんなふうにしてある時彼女が笑い歌うのを見た一人の年取った女工は言った、「あの娘も終わりはよくないだろう。」
 ファンティーヌは情夫をこしらえた。手当たり次第にとらえた男で、愛するからではなく、ただ傲慢《ごうまん》と内心の憤激とからこしらえたのだった。やくざな男で、一種の乞食《こじき》音楽者で、浮浪の閑人《ひまじん》で、彼女を打擲《ちょうちゃく》し、彼女が彼とでき合った時のように嫌悪の情に満たされて、彼女を捨てて行ってしまった。
 ファンティーヌは自分の娘だけは大事に思っていた。
 彼女が堕落してゆけばゆくほど、彼女の周囲が暗黒になればなるほど、そのやさしい小さな天使はいっそう彼女の魂の奥に光り輝いてきた。彼女はよく言っていた、「お金ができたら私コゼットといっしょに住もう。」そして笑った。咳《せき》はなお去らなかった、背中に汗をかいた。
 ある日彼女はテナルディエの所から次のような手紙を受け取った。「コゼットは土地に流行《はや》ってる病気にかかっている。粟粒疹熱《つぶはしか》と俗にいう病だ。高い薬がいる。そのため金がなくなって薬代が
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