マドレーヌさんであった。
 彼は慇懃《いんぎん》でまた悲しげなふうをしていた。人々は言った。「あの人こそは金持ちであっても傲慢《ごうまん》でなく、幸福であっても満足のふうをしていない。」
 ある人々は、彼をもって不可思議な人物と見なし、決してだれもはいったことのない彼の室には、翼のついた砂時計が備えられ、十字に組み合わした脛骨《けいこつ》や死人の頭蓋骨《ずがいこつ》などが飾られていて、いかにも隠者の窖《あなぐら》のようだと言った。その噂は広く町にひろがって、ついにはモントルイュ・スュール・メールのりっぱな若い婦人で意地の悪い者が四、五人集まって、ある日彼の家を訪れて彼に願った。「市長さん、あなたのお室を見せて下さいな。世間では洞窟《どうくつ》だと言っていますから。」彼はほほえんで、即座にその「洞窟」へ彼女らを導いた。彼女らは好奇心のためにまったくばかを見た。普通ありふれたかなり粗末なマホガニー製の器具が簡単に並べられ十二スーの壁紙が張られてる室にすぎなかった。そして彼女らの目に止まったものとしてはただ、暖炉の上にある古い型の燭台二つだけで、「調べてみると」銀でできているらしかった。いか
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