十スーで諸君にくれるのだ。」
 ファムイュはまたそれをさえぎった。
「トロミエス、君の意見は法則となるんだ。君の好きな作者はだれだ!」
「ベル……。」
「ベル……カンか。」
「いや。……シューだ。」([#ここから割り注]訳者注 ベルシューは「美食法」という詩の作者[#ここで割り注終わり])
 そしてトロミエスはしゃべり続けた。
「ボンバルダに栄誉あれ! エジプト舞妓《まいこ》の一人を加うれば、エレファンタのムノフィス料理店にも肩を並べ、ギリシャ売笑婦の一人を加うれば、ケロネのティジェリオン料理店とも肩を並べるだろう。何となれば、婦人諸君、ギリシャにもエジプトにも、ボンバルダというのがあったのである。アプレウスの書物に出ている。ただ悲しいかな、世事は常に同一にして何ら新しきことなし。創造主の創造のうちにはもはや何ら未刊のものなし! ソロモンは言う、天が下に新しきものなし[#「天が下に新しきものなし」に傍点]! ヴィルギリウスは言う、恋は世の人すべてのものなり[#「恋は世の人すべてのものなり」に傍点]! 今日、学生が女学生と共にサン・クルーの川舟に乗るのは、昔アスパジアがペリクレスと共にサ
前へ 次へ
全639ページ中307ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング