った。彼女らの物語はようやく始まったばかりなのにもう既にいくつもの插話《エピソード》があった、そして相手の男の名も、その第一章にアドルフというかと思えば、第二章にはアルフォンズとなり、第三章にはギュスターヴとなっていた。貧苦と嬌艶《きょうえん》とはいけない相談役である。一は不平を言い、他は媚《こ》びる。そして下層の美しい娘らはそれを二つながら持っていて、両方から耳に低くささやかれる。護りの弱い彼女らの魂はそれに耳を傾ける。そこから彼女らは堕落して、人に石を投げらるるに至る。そして彼女らは、もはやおのれのいたり及ばぬ清らかなるものの輝きで圧倒せらるる。ああ、もしユングフラウ([#ここから割り注]訳者注 物語の聖き少女[#ここで割り注終わり])にして飢えていたとせんには!
ファヴォリットはイギリスにいたことがあるというので、ゼフィーヌとダーリアとから尊敬されていた。彼女はごく早くから自分の家というのを一つ持っていた。父は乱暴で法螺《ほら》吹きの数学教師であって、結婚したことがなく、老年にもかかわらず家庭教師に出歩いていた。この数学の教師はまだ若い時に、暖炉の灰|除《よ》けにかかっていた女
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