、銀の食器のはいってる籠《かご》だった。彼はそれを取り、もう何の用心もせず足音にも気をとめずに大またに室を通り、扉《とびら》の所に達し、礼拝所にはいり、窓を開き、杖を取り、窓縁をまたぎ、背嚢《はいのう》に銀の食器をしまい、籠をなげ捨て、庭を過ぎ、虎《とら》のように壁を飛び越え、そして姿を消した。

     十二 司教の働き

 翌朝、日の出る頃、ビヤンヴニュ閣下は庭を歩いていた。
 マグロアールがすっかり狼狽《ろうばい》して彼の所へかけてきた。
「旦那《だんな》様、旦那様、」と彼女は叫んだ、「銀の器《うつわ》の籠《かご》はどこにあるか御存じでいらっしゃいますか。」
「知っているよ。」と司教は言った。
「まあありがたい!」と彼女は答えた。「私はまた、どうなったかと思いました。」
 司教は花壇の中でその籠を拾ったところだった。彼はそれをマグロアールに差し出した。
「ここにあるよ。」
「え?」と彼女は言った、「中には何もないではございませんか。銀の器は?」
「ああそう、」と司教は言った、「お前が心配しているのは銀の器だったのか。それはどこにあるか私も知らない。」
「まあ何ということでしょう
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