たら、間もなくコゼットに会えるだろうという考えがふと起こりましたのよ。ああ、幾年も自分の子供の顔も見ないでいるというのは、何というまちがったことでしょう! 人の生命《いのち》はいつまでも続くものでないことをよく考えておかなければなりません。おお、行って下さるなんて市長さんは何と親切なお方でしょう! 大変寒いというのは本当なんですか。せめてマントくらいは着てゆかれましたでしょうね。明日《あした》はここにお帰りですわね。明日はお祝い日ですわ。明日の朝は、レースのついた小さな帽子をかぶることを私に注意して下さいね。モンフェルメイュはそれは田舎《いなか》ですわ。昔私は歩いてやってきたんです。ずいぶん遠いように思えました。けれど駅馬車なら早いものです。明日《あした》はコゼットといっしょにここにおいでになりますわ。ここからモンフェルメイュまでどのくらいありますでしょう?」
 サンプリス修道女には距離のことは少しもわからなかったので、ただ答えた。「ええ、明日はここに帰っておいでになると思います。」
「明日、明日、」とファンティーヌは言った、「明日私はコゼットに会える! ねえ、御親切な童貞さん、私はもう病気ではありませんわね。気が変なようですわ。よかったら踊ってもみせますわ。」
 十五分も前の彼女の様子を見た者があったら、今のその様子に訳がわからなくなったであろう。彼女はもう美しい顔色をしていた。話す声も元気があり自然であって、顔にはいっぱい微笑をたたえていた。時々は低く独語しながら笑っていた。母親の喜びはほとんど子供の喜びと同じである。
「それで、」とサンプリス修道女は言った、「あなたはそのとおり仕合わせですから、私の言うことを聞いて、もう口をきいてはいけませんよ。」
 ファンティーヌは頭を枕につけて、半ば口の中で言った。「そう、お寝《やす》みなさい、子供が来るんだからおとなしくしなければいけませんって、サンプリスさんのおっしゃるのは道理《もっとも》だわ。ここの人たちのおっしゃることは皆本当だわ。」
 それから、身動きもせず、頭も動かさず、目を大きく見開いてうれしそうな様子で、彼女はあたりを見回し初めた。そしてもう何とも言わなかった。
 サンプリス修道女は、彼女が眠るようにとその帷《とばり》をしめた。
 七時と八時との間に医者がきた。何の物音も聞こえなかったので、彼はファンティー
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