)の二つを。かく彼女は考えていた。そしてまた考えのとおりに行なった。その結果、前述のごとく彼女は純白な色を呈し、その輝きは彼女の脣《くちびる》や眼をもおおうていた。その微笑も白く、その目つきも白かった。その内心の窓ガラスには一筋の蜘蛛《くも》の巣もなく一点の埃《ほこり》もかかっていなかった。聖ヴァンサン・ド・ポール派のうちに身を投ずるや、彼女は特に選んでサンプリスの名前をつけた。シシリーのサンプリスといえば人の知る有名な聖女である。聖女はシラキューズで生まれたのであって、セゲスタで生まれたと嘘《うそ》をつけば生命は助かるのであったが、嘘を答えるよりもむしろ両の乳を引きぬかれる方を好んだのである。その聖女の名前を受けることが彼女の心にかなったのだった。
 サンプリス修道女は初め組合にはいった頃、二つの欠点を持っていて、美食を好み、また手紙をもらうことが好きだった。がしだいにそれを矯正《きょうせい》していった。彼女は大きい活字のラテン語の祈祷書《きとうしょ》のほかは何も読まなかった。彼女はラテン語は知らなかったが、その書物の意味はよく了解した。
 この敬虔《けいけん》な婦人はファンティーヌに愛情を持っていた。おそらくファンティーヌのうちにある美徳を感じたのであろう。そして彼女はほとんど他をうち捨ててファンティーヌの看護に身をささげていた。
 マドレーヌ氏はサンプリス修道女を片すみに呼んで、ファンティーヌのことをくれぐれも頼んだ。その声に異常な調子のこもっていることを彼女は後になって思い出した。
 サンプリス修道女を離れて、彼はファンティーヌに近寄った。
 ファンティーヌは毎日、マドレーヌ氏の来るのを待っていた、ちょうど暖気と喜悦との光を待つかのように。彼女はよく修道女たちに言った。「私は市長さんがここにおられる時しか生きてる心地は致しません。」
 彼女はその日熱が高かった。マドレーヌ氏を見るや、すぐに尋ねた。
「あの、コゼットは?」
 彼はほほえみながら答えた。
「じきにきます。」
 マドレーヌ氏はファンティーヌに対していつもと少しも様子は違わなかった。ただ彼はいつも三十分だけなのにその日は一時間とどまっていた。それをファンティーヌは非常に喜んだ。彼はそこにいる人たちに、病人に少しも不自由をさせないようにと繰り返し頼んだ。ちょっと彼の顔がひどく陰鬱《いんうつ》になるのを
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