はやしてあげよう。だがわしはもう決して出て来ないよ。お前達がきのこをたくさん取っていったら、村の人達も不思議に思って、皆でやって来るに違いない。わしはお前達のような子供の前に出て来るのは構《かま》わないが、大人《おとな》達の前に出て来ると、きっと悪いことが起こるのだ。では、これでお別れだ。そして、わしがいないと危ないから、もうたき火はしないがよい。それから、きのこを取るたびに、お前達を大変好きだった山の爺さんのことを、思い出してくれよ。よいかね!」
 そして白髪《しらが》白髭《しろひげ》の大きなお爺さんは、ちょっと会釈《えしゃく》をするように頭を動かしましたが、そのまますーっと消えてしまいました。
 子供達はにわかに悲しくなって、しくしく泣き出しました。すると、どこからか非常に美しい小鳥の声が聞こえてきました。その声が、「きいのこきのこ……」と歌ってるようでした。それを聞いてるうちに、子供達はまた心が楽しくなりました。山の爺《じい》さんの話をしながら、村へ帰って行きました。
 翌日の朝、皆で、「おうさむこさむ……」や「きいのこきのこ……」などを歌いながら、その林にやって来ますと、一面に
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