お山の爺さん
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)ご存《ぞん》じ
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一
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おうさむこさむ
やまからこぞうがないてきた
なーんとてないてきた
さむいとてないてきた。
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こういう歌を皆さんはご存《ぞん》じでしょう。この歌が流行《はや》り始めた頃には、おもしろい話がそれについていたものです。この歌をうたって山の近くでたき火をしていると、一寸法師《いっすんぼうし》の子僧《こぞう》が火にあたりに山から飛んでくる、というのです。
ある片田舎《かたいなか》の、山の裾《すそ》にある小さな村に、右のことがどこからか伝わってきた時、子供達は眼をまんまるくしました。考えれば考えるほど、おもしろくておかしくてしようがありませんでした。しまいには皆で集まって、山の小僧《こぞう》を呼んでみようということになりました。
村から少し離れた山のふもとに、松や柏《かしわ》やくぬぎや椎《しい》などの雑木林《ぞうきばやし》があり
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