を自分と同じような、憎むべき厭うべき死人同然な醜《みにく》い人間にしてしまったのだ。世にも不思議な、いまわしい怪物にしてしまったのだ。さあ、幸いにわれわれの呼吸が他のものに対すると同じように、われわれの命にも関《かか》わるものならば、限りない憎悪の接吻を一度こころみて、たがいに死んでしまおうではないか」
「何がわたくしの身にふりかかって来たというのでしょう、聖《セント》マリア! どうぞわたくしをあわれとおぼしめしてください。……この哀れな失恋の子を……」
ベアトリーチェは、その心から湧き出る低いうめき声で言った。
「おまえは……。おまえは祈っているのだね」と、ジョヴァンニはまだ同じような悪魔的の侮蔑をもって叫んだ。「おまえのくちびるから出て来るその祈りは、空気を〈死〉でけがしてしまうのだ。そうだ、そうだ、一緒に祈ろう。一緒に教会へ行って、入り口の聖水に指をひたそう。おれたちのあとから来た者は、みんなその毒のために死んでしまうだろう。空中に十字を切る真似をしよう。そうすると、神聖なシンボルの真似をして、外部に呪詛《じゅそ》をまき散らすことになるだろうよ」
「ジョヴァンニ……」
ベアト
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