あなたをよこして下さいました。わたくしの大事の大事のジョヴァンニ……。あわれなベアトリーチェは、それまでどんなに寂しかったでしょう」
「それが苦しい運命だったのですか」と、ジョヴァンニは彼女を凝視《みつ》めながら訊いた。
「ほんの近ごろになって、どんなに苦しい運命であるかを知りました。ええ、今までわたくしの心は感覚を失っていましたので、別になんとも思わなかったのです」
「ちくしょう!」と、彼は毒どくしい侮蔑と憤怒とに燃えながら叫んだ。「おまえは、自分の孤独にたえかねて、僕も同じようにすべての温かい人生から引き離して、口でも言えないような怖ろしい世界に引き込もうとしたのだな」
「ジョヴァンニ……」
ベアトリーチェはその大きい輝いた眼を男の顔に向けて言った。彼の言葉の力は相手の心に達するまでにはいたらないで、彼女はただ雷《らい》にでも撃たれたように感じたばかりであった。
ジョヴァンニは、もう我れを忘れて、怒りに任せて罵《ののし》った。
「そうだ、そうだ。毒婦! おまえが、それをしたのだ。おまえはおれを呪い倒したのだ。おれの血管を毒薬で満たしたのも、おまえの仕業《しわざ》だ。おまえはおれ
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