た。こういう花が一団となって目ざましい壮観を現出し、たとい日光がここに至らずとも、十分に庭を明かるく照らすにたるかのようであった。
土のあるところには、すべて草木が植えられてある。それらはその豊麗なることにおいて、かの灌木にやや劣っているとしても、なおひとかたならざる丹精の跡がありありと見られた。また、それらの草木は皆それぞれに特徴を有《ゆう》していて、それがその培養者たる科学者にはよく知られているらしく、あるものは多くの古風な彫刻を施した壺のうちに置かれ、また、あるものは普通の植木鉢のうちに植えられていた。それらのあるものは蛇のように地上を這いまわり、あるいは心のままに高く這いあがっていた。また、あるものはバータムナスの像のまわりを花環のように取り巻いて、布《きれ》のように垂れさがった枝はその像をすっかり掩《おお》っていた。それらはまこと立派に配列されていて、彫刻家にとってはこの上もないよい研究材料であろうと思われた。
ジョヴァンニが窓の側に立っていると、木の葉の茂みのうしろから物の摺れるような音が聞こえたので、彼は誰か庭のうちで働いているのに気がついた。間もなくその姿が現われたが、それは普通の労働者ではなく、黒の学者服を身にまとった、脊丈《せい》の高い、痩せた、土気色をした、弱よわしそうに見える男であった。彼は中年を過ぎていて、髪は半白で、やはり半白の薄い髯《ひげ》を生やしていたが、その顔には知識と教養のあとがいちじるしく目立っていた。但《ただ》し、その青春時代にも、温かな人情味などはけっして表わさなかったであろうと思われるような人物であった。
なにものも及ばぬほどの熱心をもって、この科学者的の庭造り師は、順じゅんにすべての灌木を試験していった。彼はそれらの植物のうちにひそんでいる性質を検《しら》べ、その創造的原素の観察をおこない、何ゆえにこの葉はこういう形をしているか、かの葉はああいう形をしているか、また、そのためにそれらの花がたがいに色彩や香気を異にしているのである、というようなことを発見しようとしているらしい。しかも彼自身は、植物についてこれほどの深い造詣《ぞうけい》があるにもかかわらず、彼とその植物との間には、少しの親しみもないらしく、むしろ反対に、彼は植物に触れることも、その匂いを吸うことも、まったく避けるように注意を払っていた。それがジョヴァン
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