のかけらをぎゅっとつかんでいたのは、誰か哀れな人間をずたずたに引裂いている夢でも見ていたのでしょう。彼等の頭の髪の代りに生えている蛇も、やはり眠っているようでした。尤も、時々、身をよじって、頭をもたげ、ねむいような、しゅっしゅっという音を立てて、叉《また》になった舌を出すのもいましたが、それもすぐ仲間の蛇の間にもぐってしまいました。
 ゴーゴン達は、とても大きな、金の翅《はね》をした甲虫というか、蜻蛉《とんぼ》というか、まあそういったもの――醜いと同時に美しくて――とにかく他のどんなものよりも、恐しい、大きな一種の昆虫に似ていました。ただそれが昆虫の千倍も百万倍も大きかっただけです。それでいながらまた、どことなく人間みたいなところもありました。仕合せなことは、彼等の寝ている姿勢によって、彼等の顔はパーシウスの方から見ると、すっかりかくれていました。というのは、彼がちょっとでもその顔を見たら、たちまち死んだ石の像になって、空中からどうっと墜《お》ちてしまったでしょうから。
『今だ、』とクイックシルヴァは、パーシウスの傍を飛び廻りながら小声で言いました、『今こそ君がゴーゴンの首を切る時だ!
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