銀で出来ているようでいながら、その中へ飛び込んで見ると、灰色の霧であって、からだが冷たく濡れるのでした。しかし、彼等の飛び方は大変速かったので、すぐに雲を抜けて、また月光の中に出るのでした。高く飛んでいた鷲が、見えないパーシウスに向って、まともにぶっ突かって来そうになったことなどもありました。何よりもすばらしかったのは、まるで空に大|篝火《かがりび》を焚いたように、俄に輝き出して、百マイルばかりに亙《わた》って月も光を失ったほどの、隕石落下の光景でした。
 二人連れでどんどん飛んで行くうちに、パーシウスは、彼のすぐ傍に衣摺《きぬずれ》の音が聞えるような気がしました。それがクイックシルヴァの見えているのとは反対の側から聞えるのでしたが、見えるのはやっぱりクイックシルヴァだけでした。
『誰の着物でしょう、僕のすぐ傍で、そよ風にさらさらと鳴りつづけているのは?』とパーシウスは尋ねました。
『ああ、わたしの姉の着物だよ!』とクイックシルヴァは答えました。『わたしがそう君に言った通り、彼女はわたし達と一しょに来ているんだ。われわれはわたしの姉の手を借りなくちゃ何も出来ないんだ。彼女がどんなにかし
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