、彼の帽子が翼《はね》をひろげましたので、彼の首が肩から抜け出して飛んで行くかと思いのほか、彼のからだ全体が軽々《かるがる》と空中に持上りました。パーシウスもそれにつづきました。彼等が百フィートも昇り切らないうちに、パーシウスは、退屈な地上を遠く下にして、鳥のようにすいすいと飛び廻ることが出来るというのは、実に愉快だなあと感じ始めました。
もうすっかり夜も更けていました。パーシウスは目を上げて、円い、明るい、銀色の月を見ました。そして、あそこまで飛んで行って、一生をそこで暮すほどいいことはないような気がしました。それから彼はまた下を向いて、下界を眺めました。海や、湖水や、銀の糸を引いたような河や、雪をかぶった山のいただきや、広い野原や、黒々とかたまった森や、白い大理石で出来た町などが見えました。そして、その全体の景色の上に、月の光が眠るようにさしたところは、月の世界にも、又どんな星の世界にも、劣るまいと思われました。又彼は、他のいろいろなものの間に、彼のなつかしい母の住むセライファス島を見ました。時々、彼とクイックシルヴァとは、雲に近づきましたが、それは遠くから見ると、羊の毛のような
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