。『耳をすまして! 静かに! シッ、シッ! さあ、来たぞ!』
 パーシウスは一心に夕闇をすかして見ました。すると、果して、あまり遠くないところに、三人の白髪婆さんが目につきました。よほど暗くなっていたので、彼等がどのような姿をしているかは、よく見えませんでしたが――それでも、長い白髪だけは分りました。そして、彼等がだんだん近づいて来るのを見ると、彼等のうちの二人は、その額《ひたい》のまん中に、空《から》っぽの眼窩《めのあな》だけがあいているのでした。しかし、三人目の姉妹の額のまん中には、たいへん大きな、ぎょろぎょろした、鋭い眼がついていて、それがまた、指輪についた大きなダイヤモンドのように、きらきらしていました。その眼があまりきつそうなので、真暗《まっくら》な夜中《よなか》にでも、昼間と同じようによく見える力をそなえているに違いないと、パーシウスは思わずにはいられませんでした。三人の眼の視力を熔《と》かして、それを一つに集めて出来上ったのがその眼です。
 こうして彼等は、大体のところ、まるで三人一しょに見ているのと同じような具合に、楽《らく》に歩き廻るのでした。ちょうど額にその眼を嵌め
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