フィリーモンじじいが、死んで、忘れられる時が来ても、やはり同じことでしょうよ!』
『そうとばかりも言いきれない、』と見知らぬ人は言いましたが、その深い声には、どことなく大変きびしいところがありました。そのうえ、彼は頭を振りましたが、そのために彼の黒い、どっしりとした巻毛が、ぶるぶるとふるえました。『向うの村に住む人間たちが、彼等の天性の愛と情《なさけ》とを忘れてしまった上は、湖が再び彼等のすまいの上に、漣《さざなみ》をたてた方がいいかも知れない!』
 その旅人の顔附があまりきつかったので、フィリーモンはほんとにちょっとこわくなったくらいでした。それに、彼が顔をしかめると、夕闇が俄かに一層暗さを増すように思われ、彼が頭を振ると、空中でごろごろと雷のような音がするので、よけいにこわくなりました。
 しかし、すぐそのあとで、その見知らぬ人の顔が、大変やさしく、おだやかになったので、老人はすっかりこわさを忘れてしまいました。それでも彼は、この年上の方の旅人は今こそこんな見すぼらしいなりをして、徒歩で旅行をしているけれども、決してただの人ではないにちがいないと感じないではいられませんでした。しか
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