はしないということだけを考えて、お前の遊び仲間のエピミーシウスが言ったり、信じたりすることを気にとめるべきではなかったのだ。そして彼女とて、もしもその箱の蓋についた不思議な顔が、そんなに誘惑するように彼女を見なかったら、そして又、箱の中の小さなつぶやき声が、前よりも一層はっきりと聞えるような気がしなかったら、多分そうしたことでしょう。それが彼女の気のせいかどうかは、彼女にはよく分りませんでした。しかし、彼女の耳には、小さな声でひどく騒いでいるように聞えるのです――それともまた、ささやくのは彼女の好奇心なのでしょうか。
『出して下さい、パンドーラさん――私達をそとへ出して下さい! 私達はあなたにとって、とてもいい、可愛い遊び相手なんですよ! ちょっと私達を出して下さい!』
『あれは何だろう?』とパンドーラは考えました。『箱の中に何か生きたものがいるのかしら? ええ、ままよ! あたしちょっと一ぺんのぞいてやりましょう! ほんの一度だけ、それから蓋をいつもの通り、ちゃんとしめておけばいいんだわ! ちょっと一ぺんのぞいて見るくらいで、別になんの事もある筈がないわ!』
しかしもうそろそろこの辺
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