の前に――

 毎年十月が来て、また去って行くように、金色の十月の日が過ぎて、鳶色《とびいろ》の十一月も同じく過ぎ、寒い十二月もまた大方終りに近づいた。とうとう楽しいクリスマスになって、それと一しょにユースタス・ブライトが来たが、彼が一枚加わると、クリスマスも一層楽しいものとなるのであった。そして、彼が大学から帰って来た翌日、ひどい吹雪《ふぶき》になった。その日まで冬もためらっていたのか、幾日も温和な日がつづいたが、それはちょうど冬の皺くちゃの顔に浮かんだ微笑みたいなものだった。丘の南向の斜面だとか、石塀で風をよけたところなどには、まだ緑のままの草が残っていた。つい一二週間前、十二月になってからのことだが、子供達はシャドウの谷川が谿間から流れ出るあたりの岸辺に、たんぽぽが一つ咲いているのを見つけたりした。
 しかし今ではもう、青草もたんぽぽも見られなかった。これはまたひどい吹雪なんだから! 大気を真白にして渦巻く吹雪の中で、もしもそんなに遠目が利くものとしたら、タングルウッドの窓からタコウニック山の円い頂《いただき》まで、一目で二十マイルの吹雪が見られるわけだった。その辺の山々を巨人達
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