たしかにペガッサスを見そうな気がするよ!』
 そして、その日は一日中、彼はビレラフォンの傍から一歩も動こうとしませんでした。そんなわけで、二人は固くなった一きれのパンを分けてたべ、泉の水を飲みました。午後になっても、彼等はそこに坐って、ビレラフォンはその子供に腕をかけ、その子供の方でもまた、ビレラフォンの手の中に彼の小さな手を置きました。ビレラフォンは自分の考えに気を取られて、ただぼんやりと、泉に影を落す木の幹や、その枝にからんでいる葡萄のつるを見つめていました。しかし、おとなしい子供の方は、じっと水の中を見おろしていました。彼は、これまで幾日も幾日もそうであったように、今日もまた希望が裏切られるのではないかと、ビレラフォンのために、心を痛めているのでした。そして、二三滴の静かな涙が彼の目からこぼれて、子を失った時にピリーニが流した多くの涙だといわれている泉の水にまじりました。
 しかし、少しもそんなことをあてにしていない時に、ビレラフォンは子供の小さな手がぎゅっと力を入れるのを感じ、静かな、ほとんど聞き取れないほどの囁きを聞きました。
『あれごらん、ビレラフォン兄さん! 水の中に影が映っています!』
 青年は、さざなみ立った泉のおもてを見おろしました。そして、ずうっと空中高く、真白か銀色かの翼を日の光にかがやかして飛んでいるらしい鳥の影とおぼしいものを見ました。
『あれはとてもすばらしい鳥にちがいないよ!』と彼は言いました。『そして、雲よりも高く飛んでいるにちがいないのに、なんと大きく見えるんだろう!』
『あれを見ると、からだがふるえる!』と子供は小さな声で言いました。『僕は空を見上げるのがこわい! それはとても美しいんだけど、僕は水に映った影だけしか見る勇気が出ない。ビレラフォン兄さん、あれが鳥じゃないってことが分らないの? あれは翼のある馬、ペガッサスですよ!』
 ビレラフォンの胸は、どきどきして来ました! 彼は一心に見上げましたが、鳥だか馬だか、とにかくその翼の生えたものは見えませんでした。何故なら、ちょうどその時、それは羊の毛を浮かべたような夏雲の奥へ飛び込んだところだったからです。しかし、すぐまたそれは、雲の中から軽く下に向って姿を現しました。それでもまだ、地上からは大変な距離がありましたが、ビレラフォンは子供を腕にかかえ込んだまま、あとずさりをして、二
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